あなたは一酸化窒素(NO)のはたらきをご存知でしょうか?
自然界にある一酸化窒素は有害なんですが、体内で分泌する一酸化窒素には、血管をしなやかに拡張させる素晴らしい生理機能があります。
もちろん、血液をきれいにして、血流をサラサラにする作用も。
動脈硬化などの恐ろしい病気を防ぎ、荒れてしまった血管を修復してくれる心強い味方となってくれるのです。
そんな一酸化窒素(NO)を増やすにはどうすればいいのでしょうか。
この記事では、血管を拡張させる一酸化窒素(NO)の効果やメカニズム、さらに分泌量を高めて、安全に増やしていく方法をわかりやすく解説しています。
さいごまで読んでいただければ、あなたの血管年齢若返りのヒントが得られるでしょう。
一酸化窒素(NO)の効果とは?
一酸化窒素が血管にもたらす嬉しい作用
- 血管拡張
- 動脈硬化予防
- 血圧の安定化
- 血行促進
いかがでしょう?
一酸化窒素のメリットは大きいと思いませんか?
人間の血管は、年齢を重ねるとともに内壁の弾力は損なわれて、だんだん厚く硬くなっていきます。
血管の衰えを食い止めて、サラサラとした血流を維持するためにも、できるものなら一酸化窒素をたくさん分泌したいものですよね。
まずは、あなたに簡単な一酸化窒素発生のメカニズムを理解していただいたうえで、分泌を促すための方法に触れていきたいと思います。
一酸化窒素は「血管内皮細胞」から産生される
血管というのはよく出来ていて、本来であれば、血栓ができないような仕組みになっているのです。
そのはたらきを担うのが「血管内皮細胞」といわれるもの。
動脈内にびっしりおおわれた「内張り」と言えば、あなたにもイメージしてもらいやすいかもしれませんね。
でもただの「内張り」ではありません。
血管を保護して、うるおいを保持するためのコーティングがしっかり施されているのです。
この「内張り」である血管内皮細胞から、血管拡張と血液サラサラ作用がある一酸化窒素が産生されるわけですね。
もしも、血管内皮細胞が衰えて、一酸化窒素の減少すれば、血管が荒れ放題となり、血が詰まりやすくなるでしょう。
そうならないためにも、一酸化窒素を増やす工夫をしていく必要があるのです。
残念ながらサプリメントで一酸化窒素を取り込むことはできません
一酸化窒素は体内で生成されるもの。
人工的に増やしたいからといって、薬やサプリメントで外から取り入れることはできません。
たしかに一酸化窒素は、アミノ酸の一種である「アルギニン」と、代謝をサポートする「酵素」から合成される物質です。
理屈で考えたら、「アルギニン」と「酵素」をサプリメントで大量に摂取すれば、一酸化窒素をつくり出すことができるはず。
しかし、人体のメカニズムはそんなにシンプルではありません。
では、どうすれば一酸化窒素を増やすことができるのでしょうか。
もっとも自然で確実は方法は、血管内皮細胞のはたらきを高めて、一酸化窒素の分泌を促すこと。
そのための具体的な方法を解説していきましょう。
一酸化窒素を増やし、血管を押し広げる5つの方法
一酸化窒素の分泌量を増やす運動
もっとも効果的なのは有酸素運動です。
ハードな無酸素運動は、筋肉を鍛えてくれますが、血管にはストレスがかかるためあまりおすすめできません。
とりわけ取り組みやすい有酸素運動が「ウォーキング」。
ちょいキツくらいのスピードで歩くと、全身の細胞に血液を巡らせることができます。
ちょうどこのとき、動脈内の血管内皮細胞は活発になっているので、一酸化窒素の分泌量が増えているのです。
ウォーキングする際、気をつけるべきことは、お腹を凹ませて姿勢よくすること。
1日20分程度ウォーキングするだけでも効果はあります。
ただし、少しでもひざの痛みがある場合は、ウォーキングは控えましょう。
ウォーキングに代わる、安全なエクササイズもあります。
血液循環を良くする「ふくらはぎ体操」
もし、あなたがウォーキングのできない状況であれば、「ふくらはぎ体操」をおすすめします。
この体操は、医学博士 池谷敏郎氏が提唱しているもので、シンプルな体操なのに血液の循環が良くなり、一酸化窒素の分泌も促してくれるのです。
やり方はかんたん。
①足を心持ちひらいて、固定した机や家具に手をかけて、つま先立ちをします。
このときひざを伸ばして、ゆっくりかかとを持ち上げるようにしましょう。
②ゆっくり戻したら、今度は、逆にかかと立ちをします。
このとき、ゆっくりつま先を上げるようにしましょう。
ふくらはぎが収縮していることを意識してください。
・・・いかかでしょう?
かんたんですよね。
つま先立ちとかかと立ちをあわせて2分。
1日3回実践するだけで、むくみもすっきり解消されるでしょう。
とくに寒い季節、血液のめぐりが悪いと思ったときは、このマッサージをすると効果的です。
血管内皮細胞を活性化し、血管拡張を促すマッサージ
ふくらはぎをマッサージして、血行を促進させ、血管拡張させるという方法もありますが、縮めて緩める血管マッサージとして効果的なのは「正座」です。
正座といっても、足がしびれるほど長時間する必要はありません。
数分程度、正座して、そのあと脚を伸ばしてみてください。
ほどよい感じでじんじんしているはず。
このじんじんが、血管内皮細胞が活性化している証拠です。
もし可能なら、数分正座、脚伸ばしのサイクルを数回繰り返しましょう。
血流が良くなり、栄養素や老廃物の運搬が滞りなく行われることになります。
どうしても有酸素運動をする時間が取れないのなら、この「正座マッサージ」なら実践できそうですよね。
血管にやさしい入浴方法
あなたはお風呂、好きですか?
やっぱり熱いお湯がお好きでしょうか?
1日の疲れをいやし、全身の筋肉をほぐしてくれるお風呂。
しかし、入浴方法を間違ってしまうと、リフレッシュできているようでいて、実は血管にストレスがかけて血栓をできやすくしてしまうのです。
まずは血管によくない入浴方法から説明しましょう。
熱いお風呂は血管をダメにする
あなたはご存知ですか?
熱いお湯(40℃~42℃)は、血管に相当な負荷をかけてしまうことを。
たしかに熱い湯にからだを浸すと、全身の細胞が活性化しているような心地よい刺激があります。
1日の疲れがすっかり癒され、リラックスできるかもしれません。
しかし、必要以上に血小板の機能が活性化して、血液のドロドロ化が進行。
血栓のできやすい血管環境をつくってしまうのです。
それだけではありません。
熱い湯は、交感神経を高めて一気に血管を収縮させて、血圧が急上昇します。
とくに冬場、冷えきった脱衣所から、いきなり熱い湯に入ったらどうなるか?
急激な温度差によって血圧も急激に変化し、血管は強いダメージを受けてしまうでしょう。
寒い季節に浴室で血管事故が多発するのはこのためです。
38℃くらいの半身浴が血管を拡張させる
熱めのお湯がダメだからといって、ぬるすぎるお湯も効果がありません。
長湯の原因になったり、お風呂に浸かりながらそのまま眠ってしまい、深刻な脱水症状になってしまうこともあるからです。
入浴方法としておすすめなのは、38℃くらいのお湯による「半身浴」。
お湯に浸かりながら、ふくらはぎをもんだり、足首を動かしたりしてマッサージをすれば、血流を良くして血管拡張を促進する効果も期待できるでしょう。
入浴前と入浴後の注意点
くれぐれも入浴前と入浴後には、十分な水分補給を忘れないようにしましょう。
とくに入浴後は、からだから水分が損なわれ、血液がドロドロの状態です。
すみやかにミネラルウォーターを飲むようにしてくださいね。
そして、寒い季節は、浴室と脱衣所の温度差には注意が必要です。
入浴に限ったことではありませんが、温度差があまりにも激しいところに急に移動すると、血管に甚大な負荷をかけてしまい、一気に血圧を高める要因に。
体内の一酸化窒素の分泌を促す食べ物
先述のとおり、一酸化窒素は外から取り込むことが困難な物質です。
もし、自然なかたちで一酸化窒素を増加させるなら、血管をしなやかにしたり、血管内皮細胞のはたらきを活性化させる食べ物を摂った方が確実といえるでしょう。
ここでは「体内の一酸化窒素の分泌を促す食べ物」を2種類紹介します。
青背魚
しなやかな血管をつくる食べ物の代表格が「青背魚」。
サバ、サンマ、マグロ(トロ)、サワラ、ブリ、アジ、ニシン、マイワシなど、、、青背魚は生活習慣病予防に効果的な食べ物と言われています。
良質なたんぱく質を摂取できて、ビタミン、ミネラルもたっぷり、おまけに低カロリー。
でも、最大の特長は、青背魚の脂である不飽和脂肪酸(DHA・EPA)。
血液のサラサラ作用はもとより、血管内皮細胞の機能を向上させるはたらきがあるのです。
DHA・EPAを摂取することによって、血管内皮細胞の機能が向上すれば、それにともない、一酸化窒素も増えていくわけですね。
以下の特集記事ではさらにDHA・EPAについて具体的に解説しています。
《関連》DHA・EPA効果効能まとめ※なぜ毎日摂取することが大切なのか?
香辛料
冷え性に効果的だとされる食べ物は、血管内皮細胞のパフォーマンスも高めてくれます。
からだの芯からあたたかくなるものといえば、あなたは何を思い浮かべますか?
そう、香辛料ですよね。
香辛料のひとつである生姜(しょうが)は、冷え性改善に効く食べ物として有名ですが、同時に血管を拡張させるはたらきもあるのです。
また、シナモン、レッドペッパー、ウコン、とうがらしなどに含まれた成分も血液循環を良くして、血管内皮細胞を生き生きと活気づかせます。
ただし、からだがあたたまるからといって過剰な摂取をしてしまうと健康に害を与えかねません。
適量を料理に加えてからだをあたためましょう。
心の状態と一酸化窒素分泌の関係について
さいごにメンタル面と一酸化窒素の関係についても言及しておきましょう。
血管の健康状態は、気持ちの変化に大きく左右される・・・この事実をあなたはご存知でしょうか?
たとえば、あなたが緊張しているときは、交感神経優位の状態です。
このとき末梢の動脈は収縮して、手足の先まで血液が流れにくくなり、血圧が高くなりやすい状態なんですね。
当然、血管内皮細胞のうるおいもなくなり、一酸化窒素の分泌も鈍ってしまう。
とくに、ご高齢の方や血圧が高めの方は、心臓がドキドキするような過緊張は回避しなければなりません。
いっぽう、リラックスして、穏やかな気持ちのときは、副交感神経優位の状態。
このとき末梢動脈はのびやかに緩和して、からだの隅々にまで血液が巡っていきます。
血流が正常になれば、血管内皮細胞も活発になり、一酸化窒素も増えていくわけですね。
とはいえ、まったく緊張なしで、ずっと副交感神経優位の状態が続くのはあまりにも不自然ではないでしょうか。
適度な精神の緊張と緩和があってこそ、血管の緊張と緩和も生み出し、血管内皮細胞に心地よい刺激が加わるのです。
そういう意味では、日々の生活のなかで適度な笑いがあると、血管の健康にとって良い影響があるでしょう。
落語などの話芸は緊張と緩和のリズムが心地よく、噺(はなし)に耳をかたむけるとすこぶる愉快な心持ちになれます。
血管にも健康にも良く、脳を活性化させる娯楽としておすすめですよ。
まとめ
いかがでしたか?
動脈内の血管内皮細胞から分泌される一酸化窒素(NO)があなたの血管をしなやかに保つことがわかりましたね。
健全に血管が拡張されれば、血液がスイスイ流れて、血圧も安定するという好循環が生まれます。
血流が悪かったり、極端に血圧が高い方というのは、一酸化窒素の分泌がうまく機能していないことも考えられるでしょう。
一酸化窒素はあなたの血管のお手入れをしてくれるありがたい存在。
毎日のちょっとした努力を怠らなければ、一酸化窒素を増やしてイキイキと若々しい血管を保つことができるのです。
以上、「血管を拡張させる!NO(一酸化窒素)の分泌量を高める方法」についての記事でした。
さいごまでお読みいただきありがとうございました。